10月
2008

日本著作権法中国語翻訳版

タイトルの通り、日本著作権法の中国語翻訳版を別のブログで立ち上げてみました。
http://jp.commentaries.asia/

実は院生時代にほぼ完成していたのですが、どこかに掲載してもらう当てもなくなってしまい、何分、綺麗な中国語を自由自在に書ける訳ではないので、妹弟子に文法チェックをしてもらったものの、妹弟子は日本語も日本法も知らないので、適切なアドバイスをくれたとは言い難く、公開できるレベルじゃないのではないかと思い、ためらっておりました。

今回、少しずつ公開していこうとするものは院生時代に作成したものを台湾バージョンに改ためたものです。
といっても、単純に漢字を簡体字から正体字(いわゆる繁体字)に改めたわけではありません。
同じ中国語でも、台湾法と中国大陸の法律は異なりますから、どっちの背景に合わせて訳語を選択するかは多少、ずれがあります。

綺麗ではない(場合によっては超怪文かもしれない、というか日本法の表現が日本人にとっても怪文だけど)中国語を公開しちゃって、価値があるのかとも思いましたが、あの「台湾著作権法逐条解説」の原作者の章先生が時間を見つけて、英語版を参照しながらぼちぼち綺麗な法律条文になるよう追ってアドバイスするから、できた分からどんどんアップしていけとのお言葉をいただいたので、ついにやってしまいました。

でもね、ここが翻訳のつらいところなんですが、いっぱい時間を費やしても、どんなにいろいろ調べて自分の知識を総動員しても、翻訳はある意味、レベルを問わなければ誰でもできるので(しかも文学と異なって条文の表現は限られる)報われない労働なんですわ。
一応、著作権なんてものが発生しているハズですが、場合によっては勝手に引用しておいても出所を表示してもらえないかもね。
翻訳者の地位はヨーロッパみたく高くないですから。
だからといって、権利放棄はしていませんので、場合によっては法的手段を採りますが…(これまで訴状を書いたことはありませんが、警告状は出したことがあります。)

必要な方が適切に引用してくれれば幸いだと思っています。
この先、これを逐条解説にして、末尾に関連判例も載せちゃったりするのが夢ですね(死ぬまでに完成するのかね?)

こうなんじゃないの、とかって誤字や誤訳やもっと綺麗な表現を教えてくれると嬉しい。
でも、いまだかつて面識のない人がメールで指摘してくれたことはないのよね~
そういう自分も普通は指摘してあげないけど(意地悪なのではなく、組織や会社のウェブはせっかく教えてあげても担当者に伝わらないし、個人ウェブはいろいろ意見を言っている割には、皆匿名なので連絡がつかないだけなのですが。)

ちなみに著作権情報センターでは日本著作権法の英文がウェブで公開されていますね。
紙のものであれば他の外国語への翻訳版もあるはずですが、改正が早いし、誰も割に合わない翻訳などなさらないのが現状のようです。

10月
2008

岡山喜久屋書店にて

先日発行された「台湾著作権法逐条解説」ですが、初版発行部数が少ないため、岡山にはもしかしたら無いだろうくらいに思っていたのですが、岡山ビブレA館の喜久屋書店で発見しました。

そもそも、棚の一段ほとんどが経済産業調査会の本だというのは結構珍しく、ここならあるんじゃないかな、と目星をつけてわざわざ見に行ったのです(^^;

見てどうするって感じですが…先日、名古屋の丸善にはなかったよと叔父が言っていたので、この目で本当に市場に流通してるのかなぁと見てみたくなったのです。

ちゃんとありましたよん。
台湾著作権法逐条解説

9月
2008

恩返し

先般、日本の恩師の話を書きましたが、今回は中国の恩師の話。

23日、日本が祝日のせいか、あまり仕事が忙しくなく、5時頃に8月に入所したばかりの弁護士さんがわたくしのところに日本語を教えてほしいといらっしゃいました。

日本語学習期間がさほど長くないので、他の弁護さんと違ってやはり日本語を読むのは骨が折れるようで、空いた時間に意味の分からないところを質問にいらっしゃいます。

で、やはり正直に言えば、ある程度の域に達していない場合、教えるということは骨が折れるのです。
ここで、ふと思いまだしました…自分の恩師LS先生を。
自分が受けた恩は他人に還すのが人のつとめですよね。

確か初めてお会いしたのは2002年頃だったと思いますが、当時のわたくしの中国語レベルは相当低く、03年に彼の学生になった当初のレベルもまだ怪しいものでございました。

しかし、彼は本当に優しくて我慢強い人です。
普通の人なら切れてしまうところを、何年もわたくしのバカな発言を聴き続けてくださいました。
先生は日本語が全く分からないし、お互いに英語は得意ではないため、とにかくわたくしが中国語で説明するしかないのです。
今でこそ笑い話ですが、わたくしが言いたいことを言えなかったときには、はっきり言って連想ゲーム状態。

あるときブランドの「希釈化(dilution)」「汚染化(pollution)」ということが言いたかったのに、専門用語が思い出せず、そこで思い出したのが…「シャネル」がラブホテルの名称として無断で使用された事件。

しかし、「ラブホテル」って中国語で何ていうのということが分からず余計に迷路に入り込んでしまったわたくしでありました。

かろうじて口から出たのが、
「シャネルという著名なブランドがあるでしょう、それをね、関係ない第三者が無断で別のことに使用しました。で、その別のものっていうのがあるお店の名前なんです。そのお店は何をしているかというと…えっと、えっと男性がよくいくお店です!」

せんせい:「それはお酒を飲むとところなの?」
わたくし:「いえ、飲み屋さんではなくて、女性のいるところです」
せんせい:「あぁ、ただの飲み屋ではなくて綺麗なお姉さんがお酒に付き合ってくれるんだな」
わたくし:「いえ、だから飲み食いに関係なくて、裸の女性がいるんです」
せんせい:「おー、やっと分かったぞ、ポルノに関係あるんだな」
わたくし:「(ちょっと違うけど、まぁ、だいたい同じだろう)そうです、そうです!」
せんせい:「つまり、有名ブランドを勝手にポルノDVD屋の名前に使って、ブランド識別力を弱めたり、汚したりしたんだ」
わたくし:「そうです(^^)/~~~」

今、思いだしてみると「男性がよくいくところ」と言ったので、このような回答になったのは妥当ではあります。

こういうこともありました。やはり商標権侵害事件を話そうとした際に、パチンコという単語が出てまいりました。
そもそも、中国では博打は違法だから、ちまたでこんな単語を見たことないわ…

わたくし:「これは博打です。多分、中国大陸では違法でしょう。」
せんせい:「推測してみるから言ってみなさい」
わたくし:「小さな玉がいっぱいあって、穴に落ちると、更にたくさんの玉が出ます。昔は自分で打ちましたが今はコンピュータでコントロールするらしいです」
せんせい:「パチンコだ」
わたくし:「え?違法だからやったことないのに、どうしてわたくしが言っていることと先生の推測が正しいと断言できるんですか?」
せんせい:「香港で実物を見たし、日本のドラマに出ていた。多分、間違いない!」
わたくし:「そうなんですか…香港にはあるんだ~」
せんせい:「いいから、続けて商標権侵害事件の話をしなさい(^^;」

わたくしが変な単語ばかり先生に言わせようとしているのではなくて、日本の事件に変なものがいっぱい出てくるからいけないんですよ。

弊所の弁護士さんは、まじめに普通の質問をされるだけで、わたくしに連想ゲームをさせることはありません。

わたくしに付き合ってくれた恩師に比べれば、普通の疑問に普通に回答するだけで「疲れた」とは思っていけないですね。
中国人は勤勉で忍耐強いと思います。

9月
2008

通訳の際のメモの取り方

タイトルを見て、わたくしが通訳の際のメモの取り方をレクチャーする記事を書いたのかと思った方がいたら、ごめなさい。

逆です…わたくしがレクチャーしてほしいのです。
わたくしは翻訳は得意ですが通訳は苦手です。
頭の回転が鈍いことと、訓練が足りないせいです。

通常の通訳で一字一句もらさず通訳する人はいません。
発言者の発言が重複していたり、非論理的であったりする場合もあるので、素人が会議などで通訳する場合は、核心部分を瞬時に読み取って、ささっと通訳するのではないでしょうか。

で、そのささっと…できないんですね、わたくしの頭は。
まぁ、内容が自分の得意分野であるとか、日頃よく仕事を一緒にしている方の言葉であれば、通訳というよりも自分の言葉で言い直してしまえるから、傍からはささっと通訳しているように見えますが。

どんなに賢い方でも、メモを取られるようですが(よほど短い文章なら要らないけど)、決まったメモ法みたいなものがあるわけではなさそう。

そういう本がないかなと本屋の語学コーナーで探してみたりするものの…
皆さん、自分で自分がやりやすい方法を実践の中で形成してきているようでして。
結局は、数をこなして自分で自分のやりやすい方法を発見するしかないのでしょうか。

世の中には同時通訳というとんでもない職業が存在しますが、その技はすごすぎて感心します。
ものすごい集中力を要すると思うので、寿命が縮まらないのでしょうか。

8月
2008

祝 台湾著作権法逐条解説の出版!

このたび、「台湾著作権法逐条解説」という翻訳本を財産法人経済産業調査会(経産省を母体とする財団法人です)から出版することができました。

この版元の「知的財産実務シリーズ」というのは知財関係のお仕事をしていらっしゃる方の中にはご存じの方もあるかもしれません。

自分のオリジナル著書ではないけど、訳者として名前があるってのはいいですね。
でも、まだ実感わかなくて他人の名前を見ているような感じです。

翻訳というのは割に合わないとよく言われます。
どんなにがんばっても原作を越えられないし、誤訳を除き、絶対無二の正解というものが存在しないため、絶対にああだこうだとケチがつく宿命だからです。

確かにそうかもしれません。
この本の翻訳もこだわりすぎた訳語があって、きっと別の人から見たらいろいろ気になる表現があると思います。

ネットでやった翻訳はいつでも自在に修正できますが、紙は版元も社会的責任を負っているし、簡単に修正はききません。だからこそ、ある一定の信用というものが生まれるともいえます。

紙の形で世に出して、より多くの人にある一定の信用ある情報として提供できる機会を得たことに感謝しております。

原作者と訳者だけでは、書籍の出版は叶いません。
多くの方々の手を経て、一冊の書籍が出来上がっています。
有形の作業はもとより、わたくしを励ましてくれたという無形の参与もあります。

あとがきでは紙面の都合上、主要な方のお名前と謝辞をさらっと書いておりますが、本当は言葉で言い表せないくらいの感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとう~~~~~~~~~って世界中に叫びたいです。
買ってくれたらもっと嬉しいです(^^)
(学術書でコスト回収するのって大変なんですよ)
台湾著作権法逐条解説
「台湾著作権法逐条解説」章忠信著 萩原有里翻訳 経済産業調査会 定価2625円(税込)
9月17日、18日くらいには大手の書店ならたぶん見つかるでしょう。
政府刊行物サービスセンターでは必ず取り扱われます。
確実で手っ取り早いのは経済産業調査会から通販でお買い求めになることかもしれません。
わたくしの子ども、章先生の孫である本書をあなたの本棚に座らせて、可愛がってくださると本当にうれしいです。

http://books.chosakai.or.jp/books/index.html

8月
2008

三校

ただいま、プライベートで某書籍の校正中であります。

三校にOKを出したので、もうほとんど原稿を直せません。
聞くところによれば、この段階でもこの原稿に差し替えてくれとおっしゃる著者様もいるそうですが…

普通は著者校正は初校だけ、又は初校と再校だけなのだそうですが…
わたくしは心配症だからいちいち原稿を見てしまう。
そして、また大きなミスに気づく(+_;)

260頁の原稿を全部自分で翻訳してチェックしたのだから、間違いがないわけないんだよなぁ…
(プロがそんなことをいっちゃいかん、って分かっているけど…)

後は「翻訳後記」の校正だけです。日本語と中国語を同じ内容で同時に書きました。だからどっちが原文というものでもないのです。WORDではしっかり表記できる漢字がQuarkXPressで組版されると?になってしまうらしく、何箇所か外字を作成しないといけないようです。
アドビのInDeginで組版したら、どうなのでしょうね。やっぱり同じ?それとも中国語の繁体字(正体字)でも日本語の漢字にないものでもへっちゃらかしら?

出版課では中国語に堪能な方はいないそうなので、中文の全責任がわたくしの肩に…ずしっ
じゃあ、中国語なんかで翻訳後記を書くなよと突っ込まないで。
原作者は日本語が分からないので、やはり後記は中国語で書きたかったのです。

お盆前に下版できるのだろうか???

7月
2008

中国語の商標専用権とは

専門用語とは難しいものでして…

「商標専用権」そのまま文字通り理解すれば、独占的に商標を利用する権利だと読めるわな。
ところがどっこい、これは日本語で言うところの「商標権」と同じ意味で使われている。
つまり、使用権も禁止権も含んでいることになる。

中国語が分かっている人間は、商標権のつもりで読んでいるが、ある日本人はなまじ専門知識があるが故に「商標専用使用権」のことだと思ってしまった。

日本語の「商標専用使用権」は中国語なら「独占使用許可」と言わねばならない。
日本語の「商標専用使用権」と中国語の「商標専用権」は意味が違う。

同業者(中国語も日本語も専門知識もある)から分かると思って、適当に言語を処理するととんでもない勘違いを引き起こす。

世の中にはそこまで考慮していない訳文がたくさんネット上に氾濫しているので、安易に引用してはいけないよ、と若い子にも言っているが、皆忙しいと、他人を信用し過ぎて自分できちんと「中国語が分からない日本人の視点で」見直していないんだよな。

反省。

7月
2008

中華人民共和国著作権法逐条解説

ずーっとほったらかしているコンテンツ 「中華人民共和国著作権法逐条解説」
現在は条文のみ公開中で、ぜーんぜん解説を書いていない。
暇なときに書こう、書こうと思いながら、なかなか書けない。

仕方がないので、条文に関連する行政法規や通達だけ、ぼちぼち足してみた。でも3条まで。
先はながーい。

それで解説書いて、日本の判例百選みたいに典型的なケースをくっつけたりしたら理想なんだろうけど、一人じゃ限界あるよなぁ。

本当は日本著作権法逐条解説(中国語版)を書きたいのだが、改正がこうも早いと、そもそも母語じゃないんだから、追いつかないよう。

婆さんになっても完成しないかも。

7月
2008

ゲラ三昧の週末

ゲラとは、ご存じのとおり「校正のために印刷所で刷られる試し刷り」のこと。

しかし、今どきは印刷所でではなく、出版部門でQuarkXPressとかの印刷ソフトを用いて組版してPDF出力したものだったりする。

今、とある法律書の訳書を手掛けておりまして、順調にいけば、8月末か9月には発行できるかもしれないという感じ。

実は原作者が8月末に日本に仕事で来るので、その時までに書籍が刷り上っていると、著者から関係者に配ってもらえるから、こんなにいい宣伝はないのにな、と勝手に考えている。
(売れても印税なしだから、自分は全然儲からないけど、版元が大量の在庫を抱えて、憂鬱な顔して「断裁処分」していいですかってメールしてきたらやだなって思うだけ…)

わたくしが急いで正確に校正を完了させられれば、8月末の発行も不可能ではなさそうなんだけど…
265頁なり。
入稿前にずいぶん見直したのに、まだあるんだよ、言葉のミス(;_;)
自分の日本語能力のなさに唖然、呆然。

秘書や助手がいっぱいいらっしゃる大先生の原稿だってたまに変なところがあるのに、ましてや、わたくしは一人なんだよう(~~;

ゲラゲラゲラ~~~~~って笑ってる場合か!

6月
2008

なんじXXせよ

某社の某様に提出する弁護士意見書ですが、なかなか翻訳が終わりません。

いや、たぶん、プロの翻訳者なら真剣に一気に翻訳すれば大した量ではないのですが(ほんの20頁ですわ)、要するになかなか「やる気」がでない…ってことなのですが。

弁護士の意見書の第一読者であるわけですが、面白いと思うときもありますが、あまりワクワクしないこともあります。

いえ、弁護士さんの力量がどうこうという問題ではなく、自分があまり興味がないというだけでのことですが。

逆に大笑いした意見書というのもあります。
おいおい、質問に答えてねーぞ、っていう場合ですね。
(普通はほとんどありません。念のため)
自分も新人の頃は、大笑いされる信じられないような訳文を書いたこともありますから、そこはお互い様でしょう。

そう言えば、世界最悪の誤植は、「not」を忘れたため「なんじ、姦淫せよ」になってしまった聖書だとどこかで聞きました。

弁護士も忙しくてへろへろになっていると、意見書原文から否定の「不」又は「非」が抜け落ちたりして、とんでもないことになります。

違法行為を奨励する弁護士って…
まぁ、普通は数人が目を通すので気づきますけど。
日本語にはあり得ないパターンですね。