先日、街中の書店でCDを購入しました。そのCDは、洞簫という日本の尺八の原型といわれている中国民族楽器とピアノの合奏により、古典曲などが収録されたもので、発行は2005年とさほど新しいものではないのですが、なかなか素敵な音でした。
それとタイトルの「中国語の意外な(邪道な)上達方法」とどういう関係があるかって?
まぁ、そんなに結論を急がないで、話につきあってくださいな。
そのCDの説明文で蕭の演奏家陳悦さんがおっしゃっていることが大変、印象に残りました。
引用及び翻訳させていただくと…
「管楽器の演奏で最も重要なのは、息のコントロールです。ですから、管楽器は人の声に最も近い楽器と言ってよいのではないでしょうか。私は声の代わりに蕭と笛子、つまり東方の古い歴史をもつ楽器を用いて現代人の感じたことや心情を歌っているのです。」
中国唱片総公司出版 北京普羅之声文化伝播有限公司製作発行「乱紅」発言者:陳悦、執筆者:郭婷婷。
どこが、わたくしの興味を引いたかといいますと、笛の音は「人の声に近い」というところです。
横笛や縦笛は世界各国に存在し、日本にも篠笛や能管、尺八など蕭や笛子と似たような楽器があるわけでこれといって珍しくはありませんし、構造的に似ていると言えばフルートもこの類なわけですが、その演奏方法や表現の仕方を比べると、蕭や笛子は中国語っぽいうことを最近何となく感じているからです(感覚的なものなので、笛子と篠笛、蕭と尺八も似たようなもんじゃん、という方もいると思いますが(^^;)。
わたくしは日本のカトリック教会のミサに出ると正直、退屈でしょうがない…
いいか悪いかの問題ではなく、自分の性格にあっていないんですよね。
もっと楽しく「神様ありがとう~~~」って歌いたいのですが、日本語ではそうはいかない。
延々全音符にスラーな(わたくし的には)かったるいフレーズが続くのであります。
少し話がそれるかもしれませんが、うちの父方、母方の祖父母は熱心で敬虔な仏教徒でしたから、わたくしは子供のころはきちんとお経が読めまして(今は忘れました)、南無阿弥陀仏はかなり中国語的だと思います。(「なんまいだ、なんまいだ~」という単調なやつではなく、横に音程のような記号が書かれていて「なぁぁ~~~、あ~~~~あぁ、あみぃぃぃだぁ、あ~~~~あぁ~~~あっ、あっ、あっ、ぶうぅぅう」と時間をかけて歌のように読む非常に疲れるやつを指しています。読んだことありませんか?正式には何というのだろう…(^^;)
だからなのかもしれませんが、日本人の話す中国語は一般的に変かも。
超初心者の中国語は、最初はまず通じません(中国語には日本語にない音が多すぎるし、音を急に上げたり下げたりできないから)。
次に上達してくると、いかにも「日本人です」と名札の付いたようなカタカナ中国語だけど、内容が複雑でなければ中国人に何とか通じる中国語を話せるようになってくる。
そして、もう少し上達すると、「あんた、どこの出身?(どこの田舎から出てきたんや、こいつ…)」と尋ねられる訛った中国語が話せるようになります。
一部の音がやはり中国語のように発音できないか、四声を間違うからです。でも、前後の文脈で意味が取れたりするものです。そして中国は広いのでわたくしより標準語の発音が苦手な中国人も現にいたりするのです…ある中国人兄弟子は北京に来て何年もたつのに相変わらず発音が矯正できなくて「お前の方が標準語みたいだよな」と嘆いておりました。
そして、この次の段階になると、中国人アナウンサーのような中国語が話せる日本人も存在するわけです(このレベルの人はプロの通訳者でしょう。また、通る声できちんと人前で話す習慣があるため、声の大きい中国人と変わらないという感じ。)
最近、購入した電子メトロノームはチューナーもついているので、それで面白がって自分の声は十二平均律の絶対音階のどのあたりでしゃべっているのか気になって遊んでみました。
日本語ではわざと音域を狭くして棒読みしてもかろうじて意味は通じますが、中国語では音に高低をつけないとほとんど意味不明となります。「中国語って歌っているみたいだよね」とうちの旦那さんが言うのも頷けます。
しかも、中国人は声がでかくて、普通にしゃべるだけなのにこの人、腹式呼吸してる(?)って感じですよね。
それから、中国の笛には「花舌」といって、舌先又は舌の根元を震わせて、「トゥルルル~~~~~」と出す音があるのですが、これは聞くところによると西洋のフルートの技術にもあるらしく、これがどうしてもできない日本人がいるのだとか。
ちなみにこれを練習するとき、中国人はよく舌先を震わせる場合は「特冷」(超寒いの意味です。発音記号はte4leng3)を早く繰り返し言ってみろという教え方があります。確かにこれをめちゃくちゃ早く繰り返し言おうとすれば、舌が面白い動きをします。舌の根元を使う場合は「河」(発音記号はhe2)と言うつもりで息を強く入れてみると口の中で簡単に振動が起こります。ちなみに後者の発音は、夫に聞いたところによれば、ドイツ語にも同じようなものがあるそうです。ゴールデンウィークに夫が北京に来た時に二人で、「げろろろろろ~~~」と音を出してみて、あぁ似たようなものだねと確認しました。外国語ができない日本人には「ゲロゲロうがいをしながら笛を吹いてみたら?」というしかありません。日本語では通常、こんな音を出さないものなぁ。
先日、ある方に中国語が上手くなるにはどうすればいいかと聞かれたのですが、その時は、言わなかったけど中国語の意外な(邪道な)上達方法は、もしかすると音の上下が激しい歌を正確に歌うことなのでは?と思った次第です。
そして、道を歩きながら数メートル先の人にも聞こえるような大きな声で恥ずかしがらずに歌を歌えるようになれば、あなたも中国人の仲間入り。
「とっさの一言」はセリフの朗読ではなく、オペラを演ずるつもりで言ってみればいいのでは?