7月
2009

大生活

先日、「大生活」というドラマをみました。
高層ビルのマンションに住んで、食べたい物が食べられて、したいことは何でもできる、そんな生活をしてみたい、そういう願望を一度も持ったことがない人というのはいるのでしょうか。

そして、誰でも程度の差はあれ、「生きることは苦しい」を考えたことがあると思います。
わたくしも心を相当病んでいるときは、毎日、消えてなくなりたいとか、この窓から飛んだら楽になれるのかなぁとか、思っていました。

このドラマのテーマは「生まれてきたからには、生きるしかない」です。
舞台は成都、主人公は40代のユーモアあふれるお人よし男性、柳東です。
勤めていた自動車修理工場が倒産、街頭で靴や果物を売って生活をつなぎ、その後、街頭の清掃員になります。
はっきりいって貧乏です。
また損な役回りと知りながら、他人を助けたりするお人よしです。
彼の周囲にはいろいろな人が登場します。

遺棄児童で路上生活の後、柳東に養ってもらう小学生の魚児ちゃん。
悪い奴じゃないんだけど、たびたび警察沙汰を起こしてしまう弟、柳西。
口先ばかりのでたらめで、人を騙したり騙されたりして訳のわからない商売をしている友人、金東民。
田舎から歌手になることを夢見て成都まで出てきたけど、お金をだまし取られて、テレビドラマのちょい役を必死に得るために助監督と寝るけど、結局、役は自分に回ってこなくて、絶望から自殺を図る張紫雲。でも、柳東に何度も助けられて、最終的には歌手デビューするんですけどね。
お金持ちだけれども、ガンで余命いくばくもない高明。高明は子どもに恵まれずその財産を自分の実の子に譲れないのが心残りで、自分の未婚の妻に知的障害者の実の兄と関係を持ってくれと頼むのですが、わたくし的にはあほかと思わざるを得ない…
もし自分がそんなことを頼まれたら、ぶん殴りますね。
「そんなことで悩む暇があったら、孤児院とか、学校に寄付しろ、孤児10人と養子縁組しろ!」と言います。
これだけお金があったら、わたくしなら教育関連事業、特に農村の女児教育に役立ててくれと遺書を残します。

そして、お金持ちの高明と貧乏でお人よしの柳東の間で揺れる洪雨。彼女は結局、高明の理不尽な依頼を引き受けて知的障害者の高明の兄と関係をもつことを承諾するのですが、高明の元恋人で秘書の梁麗の罠にかけられ、高明の運転手の子どもを身ごもってしまい、高明に冷たくされます。

中国はものすごい格差社会だと思います。
最下層にいる人が上層の生活を望む気持ち、よくわかります。
日本社会に比べて何でもありの幅が広い中国ですから、手段を選ばずにのしあがる人は、現実の社会でも多いのだと思います。
きれい事だけでは、なかなかのしあがれないので、皆涙を流すことになるわけですが…

このドラマのよいところは、貧乏だけど何とかなる、と笑えるところ。
決していい暮らししていないのに、主人公にかかわった人たちが幸せ感を得られるところでしょうか。
実際、他人助けは自分助けになる…中国人がよくいうセリフです。

昔、植木等さんの歌で「仕事のないやつぁ俺んとこへ来い! 俺もないけど心配すんな」という歌があったそうですが(夫に昔教えてもらいました)、まさにそんな歌が似合うドラマかなと思います。

本筋からずれますが、このドラマのセリフを聴くことは標準語の勉強には不利です。成都の庶民の話し方は、少し変わっています。
もちろん、上海とか広東とか、全く別の言語というほどの隔たりはありませんが、すごく特徴的な訛りと声調の変化がありますので…