3月
2009

中国の学術書の表現は面白い

最近は、めっきり専門書を始めから終りまで通読するということがなくなりました。
調べたいときに、調べたい所をぱっと見て終わり…
別にそれでも通常の仕事上、何ら困ることはありませんが、これでは研究者失格だわなと思い、日頃、あまり見ない「はじめに」という部分を読んで、著者の先生の法律に対する熱い思いをおすそ分けしていただきました。

そこでふと思ったのですが、日本の先生は超真面目というか、一般人が日常あまり使わない言葉をよく使うんですよね。
うっかり、わたくしも翻訳でそういう言葉を使うとチェッカーがその言葉を知らなくて誤訳とされることもあったりして。
あと、カタカナも多いなぁ…訳しきれない言葉は全部、そのままカタカナにしてしまう日本人って何か協調性ありすぎですね。

それに比べて、中国の先生はユニーク…というか故事成語がお好き。
由緒正しい故事成語でなくとも、俗にいう四字熟語や、自分で語呂のよい韻を踏んだスローガンみたいな章タイトルをお付けになったりもする(こういうのは本当に訳しようがなくて苦労する…)

例えば、所有権と知的財産権の違いを説明する場合、日本人だと

情報は公共財的性格を有しており、その最大の特徴は、消費の排他性がないという点にある(消費の排他性、非競合性)。つまり同じ情報を複数の者が同時に使用し得る(重畳的使用可能性)。
中山信弘著「著作権法」有斐閣、2007年10月、18頁

とのように真面目な言い回しが普通に延々続くのですが、中国の先生によると

知的財産権の権利者は「貨許三家」(訳注:一つの貨物について三人と約束する)又は「一女両嫁」(訳注:一人の女性が一生のうちに何度も嫁ぐこと)となってもかまわない。不動産一棟の所有者は売出時に、それぞれ独立した二人の買主に売ることはできない。
鄭成思著「知的財産法論」第三版、法律出版社2003年10月、64頁。

とのような説明がお好きだったりして。
しかしながら、前者の日中訳も後者の中日訳も妙訳は困難なのではないかと思ったりするのでした。
何でも訳したがるのは職業病(^^?